池口寺薬師堂の復旧完了 大桑村殿の県宝 豪雨被災 土砂に押され移動 「曳家」で元の位置に

令和3年8月の豪雨災害で被災した大桑村殿の県宝・池口寺薬師堂の復旧工事が完了した。裏山の土砂崩れで建物ごと4㍍ほど押し出されていた。3年をかけ地域の遺産が元の姿に戻ったことを関係者が喜んでいる。
薬師堂は鎌倉時代の創建とされ、幅5・5㍍、奥行き7・3㍍。過去に改修を重ね、平成22(2010)年には資料を基に当初の姿に復元する工事が施された。堂内は回廊となっており、村指定文化財の薬師如来坐像、日光・月光菩薩像などが納められる。
土砂崩れでお堂は正面前の石段の際まで流され、傾いた状態だった。解体などをせずそのまま移動させる曳家工法で復旧し、破損した床や壁などを修復しながら元の位置へ戻した。堂内にも土砂が流れ込むなどし、一部が壊れた仏像は京都の専門業者が修理した。今年9月に全ての工事が完了した。
西澤義正住職(71)は「夜中にすごい音を聞いた。まさか丸ごと押し出されるなんて」と当時を振り返る。10月には復興法要を行い地域にお披露目した。「鎌倉時代から続く歴史あるお堂。元通りになり良かったし、今後も守っていきたい」と話した。
堂内は通常入れないが、池口寺に声を掛け都合が合えば拝観が可能。