あかたつ漬物製造 中止 南木曽町 信州の伝統野菜 担い手高齢化 栽培も縮小

信州の伝統野菜に認定され、南木曽町が伝承地となっている「あかたつ」(里芋の一種)の町内での漬物製造が、今季中止された。生産・製造に携わる人の高齢化に加え、現在の設備だと、食品衛生法の改正で6月から厳しくなった漬物製造の基準に対応できなくなった。今後は種の保存のため、生産者が少量を栽培する見込みだ。
町産業観光課などによると、あかたつは少なくとも明治時代から栽培され、主に赤紫色の茎を漬けて食べる。町に隣接する馬籠(岐阜県中津川市)出身の文豪・島崎藤村の作品にも登場し、自伝的小説『家』の中で「お前さんが子供の時には、ソラ、赤い芋茎の御漬物などが大好きで......」というせりふがある。
読書の上の原地区で長年、栽培と漬物製造がされていた。担い手の高齢化から平成26(2014)年、岩倉地域の「岩倉村おこし組合」が役割を引き継いだ。例年は10月ころに収穫し、塩や酢で漬けて町内や周辺地域で販売した。
生産農家で同組合員の新井和良さん(78)は「残念だが担い手が少ない現状の中で仕方がない」と受け止める。組合員は主に80代前後。関わる人たちの高齢化・減少が進む中、法改正に対応するためにかかる設備費用を考慮した。「長年親しまれてきた作物。残していくため、わずかではあるが栽培を続ける」と話している。