地域の話題

風土に根ざした営み記録 伝統のカラムシ栽培、映画に

 信州大学全学教育センター教授で映像人類学者の分藤大翼さん(52)=松本市=が監督した映画「からむしのこえ」が9日、松本市美術館で上映される。上布の原料となるイラクサ科の多年草・カラムシを代々育てる福島県会津地方の昭和村に通い、手仕事に携わる人々の暮らしや思い、技術や知恵や言葉を収録した。厳しくも豊かな自然と共に生きるひたむきな姿を通して、混迷する現代を生きるヒントを得てほしいとの願いを込めた。

 平成28(2016)年から3年間・14回にわたって昭和村に通い、越後上布や小千谷縮の原料となるカラムシを育てる人々の春夏秋冬を追った。カラムシを育て、繊維から糸を紡ぎ、布を織るサイクル―。「カラムシだけは絶やすなよ」の言葉を胸に先祖代々の営みを守り続ける人々や、新たに移り住んで文化を継承する人々、カラムシがあるからこそ生まれた道具や言葉と、手間暇をかけた暮らしの確かさを映し出す。
 分藤さんは国立歴史民俗博物館の共同研究員として記録映画作りに参加。工芸の街松本に移り住んだ縁や、哲学者の鞍田崇・明治大学准教授との出会いを機にカラムシを題材に選んだ。令和元年の完成後、新型コロナウイルス禍で大々的な上映会ができずにいたが、市民有志でつくる「文化・芸術による学びの場をつくるre△un―リアン」の協力で上映会が企画された。利便性を過度に追求した現代社会を念頭に「私たちの暮らしは持続性に疑問符が付く状況にある。自然と関わる暮らしをもう一度考え直す機会に」と話している。
 午後2時からで分藤さんのトーク付き。入場料1000円。申し込みは専用フォーム、問い合わせはリアンの伏見さん(電話090・7010・9900)へ。