2024.11.24 みすず野
どんなことを伺っても丁寧に答えてくださる方だった。こちらの思慮が足りず、深い悲しみを思い出させてしまうような質問も思い返せば少なくなかった気がする。それでも、いつも真摯な態度で対応してくださった。私設の康花美術館(松本市北深志2)館長の須藤正親さんの訃報が弊紙で伝えられた◆平成21(2009)年、30歳だった長女・康花さんを病気で亡くした。類いまれな画才を持っていた康花さんを顕彰するために、24年に同美術館をオープンさせた。家族との死別や闘病の中で制作された、康花さんの多くの作品と向き合った。それらの絵を読み解く作業は、父親という立場から考えるに、身を引き裂かれるようなこともあったと想像に難くない◆筆者が体調を崩した折、親身になって心配してくださった。家族を相次いで病気で亡くしていることも背景にあったのだろう。温かく力強い励ましの言葉は深みがあり、思わず目頭が熱くなった◆須藤さんのことだから、康花さんの絵の研究も深まっていたに相違ない。康花さんのもとに行かれ、この世では話せなかったあれこれを談笑されていることだろう。ご冥福を祈る。