2024.11.21 みすず野
買い物をして受け取るレシートは大げさにいえば人生の記録、控えめにいうと生活のささやかなメモのようなものだろうか。例えば1カ月分のレシートを取り置いて通して見ればそれはひとつの生活史になるような◆26人のレシートを解説した『レシート探訪』(藤沢あかり著、技術評論社)は、この小さな紙に暮らしが詰まっていることを教えてくれる。傘の作家の男性は、神奈川県の山あいにある自宅から都内のアトリエまで電車通勤のときは新聞を、車の場合は同じ値段でコーヒーを買う◆学生時代にアルバイトをしていたコンビニで、サラリーマンが新聞の名前を言ってお金を置き「自分でシュッと抜き取っていく」様子に憧れていたという。社会に出てからは同じようにして「20年以上買って読んでいます」という。2年前の日付の領収書には、コンビニ名と「160円」の代金が記されている◆特別な物を買った時や、美術館や植物園などの入場料のレシートはなんとなく捨てずらくてしばらく財布の中に入れたままになる。小紙もコンビニで販売している。店頭で「シュッと抜き取って」読んでもらえる紙面づくりをしなければ。