2024.11.10 みすず野
時雨を『空の図鑑』武田康男写真・監修(KADOKAWA)で改めて調べてみた。晩秋から初冬にかけて降ったりやんだりする冷たい雨。冬の季節風によって、日本海の暖かい海面上でできた対流雲がもたらす│と教わる◆手元の辞書も引いてみた。元来は一年中見られる、風を伴う局地的な天候の変化をいい、春の通り雨を「春しぐれ」、雪が同じような降り方をすれば「雪しぐれ」という│と補足があった◆加藤楸邨の直弟子の俳人・石寒太さんが、編著書で歴史的なことに触れていた。平安時代に遷都で、現在の奈良から京都へ移ってきた貴族たちが、この気象の風情に感じ入り、最初に「しぐれ」という言葉を使い始めたと考えられているという。時雨の風情は日本人の美意識に好まれ、中世以降は解釈が広がり、盆地以外の太平洋側地方の局地的な小雨も時雨というようになったそうだ◆場所は限定されず、どうやら松本や木曽地方でも同じ状況なら「時雨」と呼んでいいようだ。時雨があるごとに、寒さが増す気もする。が、風情を感じるように努めれば憂鬱も薄らぐ、かもしれない。「天地の間にほろと時雨かな」高浜虚子。