地域の話題

文化財修復の漆職人へ 塩尻市の地域おこし協力隊員・川北恭世知さん 木曽平沢で修業開始

地域おこし協力隊員として文化財修復作業に携わり始めた川北さん

 塩尻市の地場産業・木曽漆器産業で文化財修復に携わる職人を目指す地域おこし協力隊員として、三重県松阪市出身の川北恭世知さん(25)が今月着任し、木曽平沢で修業を始めた。産地の主要事業である文化財修復技能を継承する期待の若手として奮闘している。

 川北さんは木曽漆器工業協同組合の組合員でつくる文化財修復チームに所属し、木曽漆器文化財修復工房で、先輩職人と働く。現在、国重要文化財に指定されている関東地方の神社の建具(扉)の修復作業中で、のみなどを使って古い漆の塗膜を除去する「かき落とし」に取り組む。新しく漆を塗るための下準備だ。修復は1年かけ完成させる。
 川北さんは三重県内の高校を卒業後、京都の伝統工芸大学校で4年間、漆器の装飾技法「蒔絵」を学んだ。漆器の表面に漆で絵や文様を描き、金や銀の金属粉をまいて表現する技だ。工芸好きな父親の影響で関心を深め、「豪華絢爛の中の繊細さにひかれた」。文様が浮き上がって立体的に見える「高上げ蒔絵」を好み、自身の作品制作にも取り入れてきた。
 金沢市の蒔絵工房で2年間働き、品質や丁寧な作業にこだわる姿勢を学んだ。友人で、昨年に木曽漆器職人で地域おこし協力隊員に着任した竹内桜咲子さんの勧めもあり協力隊への応募を決めた。
 文化財修復への挑戦について、川北さんは「自分が使って来た道具や用語も違って新鮮」と目を輝かせる。チームの先輩は皆穏やかで「風通しがよく伸び伸びと考えながらできる環境」に感謝する。隊員の任期は3年で「先輩をサポートできる知識や経験を身に付けられるよう頑張りたい」と意欲をみせる。
 文化財修復チームは40~70代の20人で構成する。平成24(2012)年には名古屋市の名古屋城本丸御殿復元作業で塗装工事の一部を担うなど大事業に関わったが、高齢化が進み、事業継続が危ぶまれている。川北さんを指導する宮原義宗さん(43)は「仕事に慣れて実践するのみ。責任感を持ってやってもらえれば。貴重な若手なので地域にも早くなじんでほしい」と語る。