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御嶽噴火災害の賠償請求訴訟 控訴審も遺族らの訴え棄却

開廷の前に横断幕を掲げて裁判所前を行進し噴火災害検証を訴える原告団

 平成26(2014)年の御嶽山噴火災害で気象庁が噴火警戒レベルの引き上げを怠ったなどとして、犠牲者の遺族ら32人が国や県に総額3億7600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が21日、東京高裁であった。筒井健夫裁判長は、一審の判決に続いて原告の請求をいずれも棄却。一審で違法とした気象庁の据え置きの判断も、「著しく合理性を欠くとは認められない」として違法性を認めなかった。

 原告側は、国は噴火前に警戒レベル引き上げ基準に当たる前兆現象が起きていながらレベル引き上げを怠ったとしていた。また、県は山頂付近に設置した観測計について、通常に作動していれば引き上げにつながるデータを観測できたはずなのに、故障を放置したと訴えていた。
 筒井裁判長は、御嶽山について「火山学的な知見の集積が十分ではない」と指摘。気象庁は噴火前の前兆現象について、過去の噴火事例と比べた規模などを見て据え置きの判断をしており「限られた資料の中で過去の事例を参照にすることは不適切とはいえない」とした。県についても、観測計の維持管理に「一審同様、注意義務違反は認められない」とした。
 令和4年7月の一審地裁松本支部の判決では、気象庁の判断を違法としたが、レベル引き上げによって立ち入り規制などの措置が噴火までにできたかは不明とし、原告の損害と因果関係は認めず請求を棄却していた。
 原告側の弁護団は、上告も視野に原告団と話し合うとした。判決を受け、気象庁は「今後も関係機関と連携した火山活動の監視や評価の技術向上をさせるとともに、火山防災情報を適宜的確に発表するよう努めてまいります」とし、阿部守一知事は「極めて大きな被害を出した噴火災害の教訓を踏まえ、引き続きご遺族の皆さまの思いにも寄り添いながら火山防災対策の強化などに取り組んでまいります」とコメントを発表した。