安全・安心の村づくり16年 大桑・貴舟豊村長 12日退任 4期 新たな庁舎 地域の拠点に

大桑村の貴舟豊村長(75)が12日、4期16年の任期を終え退任する。平成20(2008)年に就任し、村役場新庁舎の建設事業を行うなど、人口減少や新型コロナウイルス禍などに直面しながらも安定した村政運営に努めてきた。村のかじ取り役として歩んだ思いを聞いた。
「住民の皆さんに寄り添い、同じ目線に立った村政運営を信条としてきた」と語る。
まず振り返ったのは新庁舎建設事業。就任間もない22年に建設基金の積み立てを始め、4期目の令和4年に完成と、在任期間を通して取り組んだ。旧庁舎は老朽化に加えて耐震基準の不足など防災上の心配があった。「安心安全な地域づくりのため、防災の拠点となる庁舎を」と移転・建設を進めた。
学び、交流、子育て、情報発信の場―。村民が求める機能を基に、新庁舎には図書館を併設した。村の人口規模に対し、図書館新設は大きな判断だったが「新庁舎は文化の拠点にもしたかった」と意義を語る。
殿と長野を結ぶ村道に架かる、大桑橋の架け替え工事は新庁舎と合わせて思い返した。老朽化で床板の劣化など危険性が高まっており、令和3年に7年がかりで完成させた。工事中の平成30年には台風による大雨で旧橋が落下、安全な橋の早期完成が待ち望まれていた。
「気がかりな点は村の人口減少」とする。子育て支援や宅地造成による住環境整備などに取り組んできたが、就任当時から現在までに、人口は約25%(約1100人)減り約3200人となっている。「想定以上。対策に特効薬はないといえ、もう少しなんとかできなかったか」と悔やむ。
木曽郡町村会長も現在まで2年半近く務めた。「あっという間」の16年だったが、村や木曽の代表として、公務以外でも常に気を張る日々だったという。退任後は、自身の牧場の整備や「かわいい」と目を細める牛たちの世話に精を出す予定だ。
13日に就任する坂家重吉新村長には、村内外の人が住みたいと思えるような「選んでもらえる村づくりを一段と進めてほしい」と願った。