石破新首相に地方再生願う 切実な市民の声次々と
臨時国会が1日召集され、第102代首相に自民党総裁の石破茂氏(67)が選出された。石破首相は地方への思いがとりわけ強く、平成26(2014)年には初代地方創生相を務めたが、それから10年を経ても東京一極集中の流れは変わらない。中信地域の住民からは実効性ある政策を求める声が聞かれた。
全国の地方都市で中心街の衰退が課題となる中、松本市内では来春までに三つの大型商業施設が閉店する。松本商店街連盟の山田善敬会長(73)は「地方から経済を活性化するシステムを作って」と訴える。商店街で個店を営む木下匡晃さん(61)=大手3=も「にぎわい創出に先進的な取り組みをしている地方都市や、その担い手への支援制度を」と期待した。
塩尻市広丘吉田の精密機械部品製造業・ユニコンの百瀬将之社長(57)は、新卒採用が難しくなっているとし「ヒト・モノ・カネを地方に回して」と求めた。都内の大学を卒業し、松本市内でUターン就職した会社員・巻山梨子さん(29)=松本市保福寺町=は「賃上げしても良い条件を求めて都市部に流れる」と世情を読み、「地方の生活に不可欠な車の維持費などを支援した方が、女性や若者の地方回帰につながる」と話した。
「周りを見ても農家の経営は本当に苦しい」と訴える安曇野市三郷明盛のイチゴ農家・山田太一さん(50)は、「農畜産物の小売価格の値上げ分を国が補助するクーポンを発行すればスーパーも値上げしやすくなるし、農家の手取り収入も増える」と提案し、農業政策の充実に期待した。疾患や障害のある子供や家族を支援する団体の代表・仲谷さやかさん(46)=安曇野市穂高=は、「行政の育児支援策は当事者ニーズに必ずしもマッチしていない」として「子育て世代の現状を見極めて」と求めた。
平成17年の合併時に6000人いた人口が年100人ずつ減少し、現在は4000人を割り込んだ筑北村で移住・定住政策を担う山田隆宣企画財政課長(59)は「新型コロナウイルス禍で国が進めてきた、地方分散や二地域移住の動きを緩めないようお願いしたい」と切実な思いを吐露した。住み慣れた地域で暮らし続けたいと願う大桑村野尻の無職・志津麻子さん(81)は「若い人が減り空き家が目立つ」と不安を語り、地方の維持や活性化に目を向けた政治を願った。