2024.10.6 みすず野
松本市内の商工会が開いた秋まつりに出掛けたときのこと。小学生の女の子が「財布を落とした」と泣きながら案内所に来た。運営スタッフが、見つけた方は案内所まで届けるようお願いの放送をすると、5分もたたないうちに「この財布かい?」と持ってきた人が現れた。女の子に笑顔が戻った◆その様子を見ていて20年近く前の記憶がよみがえった。小学生になったばかりの娘が、家の鍵をどこかに落としたと言って帰ってきた。ことの重大さを言って聞かせ、一緒に探そうと、歩いてきたという道のりを2人で目を凝らしながらさかのぼった。結局、見つからなかった。大粒の涙をこぼす娘に「これからは絶対になくしちゃ駄目だよ」と強く言い聞かせた◆そんな娘に、今ではスマートフォンの使い方で困り、面倒くさがられながら教わることもある。ぱっぱとスマホを扱う姿は、頼もしくさえ見える。立場は時代の流れとともに変わる◆鍵探しの帰り道「疲れて、もう歩けない」と泣く娘をおぶって家に向かった。ほっとしたのか、娘は途中で眠り込んでしまった。ずしりと重い背中に、なぜか幸せを感じたことを忘れられずにいる。