連載・特集

2024.10.10 みすず野

 江戸時代の本草学者、戯作者の平賀源内(1728~79)は、テレビドラマの主人公として描かれるなど根強い人気を持つ。さまざまな分野に才能を発揮。静電気の発生装置「エレキテル」は人々を驚かせた◆この奇人の一代記『表裏源内蛙合戦』は、井上ひさしさんの戯曲で度々上演されている。その中にすべて4文字の成句で作られた歌がある。順風満帆、出世街道を一直線に突き進んでいるとき、町人が歌う。「平賀源内 前途有望 研究熱心 学業優秀 新進気鋭 臨機応変 当意即妙 才気煥発 眉目秀麗 五体健全」などと続く◆ところが、いったんつまずき、これまで意気揚々と歩んできた道を踏み外してしまうと、町人たちは「平賀源内 前途絶望 御先真暗 先行暗澹 挫折頓挫 室内蟄居 暴飲暴食 自棄自暴 沈思黙考 断腸断絶」と歌い始める(『巷談辞典』文春文庫)◆江戸の町人も、現代の市民も、一人一人は微力だが、その目は厳しく物事を見つめる。特に世の中の力あるものには、鋭い視線を浴びせ続ける。当初の期待が大きいほど、裏切られたと感じたときのしっぺ返しは強烈だ。間もなく選挙が始まる。