11月の旧開智学校再オープンに向けイベント準備

耐震工事を終えて11月に一般見学を再開する国宝・旧開智学校校舎(松本市開智2)で、再オープンを記念したイベントの企画が進んでいる。館内で常設展示していた謄写版を使った印刷体験もその一つだ。謄写版を使った浮世絵などの制作に取り組む美術孔版画家の佐藤勝英さん(59)=上伊那郡宮田村=を迎えて印刷の実演や体験イベントを計画している。
24日に旧開智学校で企画の打ち合わせがあり、佐藤さんが立ち会い、職員3人が印刷を体験した。原画を半透明のろう原紙にトレースすると、やすりの上に置いた原紙を鉄筆でなぞって小さな穴を開けた。原紙をセットした謄写器の上からインクを乗せたローラーを転がすと、用紙に原画のイラストが写された。体験した事務員の加藤史絵さんは「自由自在な表現ができて驚いた。子供たちが体験したら喜ぶと思う」と話していた。
謄写版印刷は「ガリ版」とも呼ばれ、学校や役所での資料の印刷などで利用された。使用する機材が比較的簡易で、手軽に印刷できるのが特長だ。ワープロやプリンターの登場で昭和40年代には下火となったというが、繊細な表現が可能で工芸として評価する声もある。松本平でも旧明科町七貴出身で松本市城東1に謄写版印刷の工房「黒船工房」を構えた故・赤羽藤一郎さんを中心に、伝承館設立などの保存・継承運動が興った。
熊本県出身の佐藤さんは平成2(1990)年に23歳で赤羽さんに弟子入りし、赤羽さんが69歳で亡くなる4年までの約2年間、技術を学んだ。赤羽さんの死後、印刷機材や印刷作品など約1000点のコレクションが旧開智学校に寄贈され、常設展示されていた。
再オープンイベントに際し、佐藤さんは「多くの人に謄写版を知ってもらう機会にしたい」と話していた。イベントの詳細は市のホームページなどで周知される予定。