進んだ復興 教訓を胸に 御嶽噴火災害 あす10年 入り込み回復へ加速 火山防災発信 県境越え

戦後最多となる死者・行方不明者63人を出した平成26(2014)年の御嶽山噴火災害から27日で丸10年となる。山麓の木曽・王滝両町村がこの間に安全対策を進め、立ち入りが規制されていた各登山道が段階的に一般開放された。昨夏には剣ケ峰(3067㍍)と王滝頂上(2936㍍)を結ぶ尾根筋「八丁ダルミ」が開放され、大勢の登山者でにぎわう元の〝お山〟に一段と近づいた。一方、災害の風化が懸念され、火山に入山する心構えを伝える啓発は欠かせず、次代への継承も取り組む必要がある。
御嶽山を敬う信者や一般登山客らでにぎわった噴火災害前の〝お山〟へ復興が加速している。
特に王滝頂上を経て剣ケ峰にたどり着ける王滝村側の王滝口は顕著だ。今季は8月末までに6906人が王滝頂上に登った。木曽町側の黒沢口登山道5~7合目に架かるおんたけロープウェイの今季利用者は1万5660人(4月25日~8月末)で、観光客や観光バスの入り込みがやや増えているという。
復興の進展は麓の飲食店や土産物店などに恩恵を与えている。王滝村でそば処さくらを営む吉田広史さん(63)=東=は「噴火前と同じくらいの来店者数に戻った」と喜ぶ。一方で「この10年で(住民の)高齢化が進んだ。これからは新しい事業者の育成が課題」と話した。
木曽おんたけ観光局の古畑浩二専務理事は「災害で山頂部に長居できなくなったという意味では、お山の楽しみ方は変わったと思う」としつつ「中京圏からの日帰りが多いので滞在してもらえる観光に変えていきたい。御嶽山ならではの文化・自然を生かし、木曽を広く周遊できるようにしたい」と話した。
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噴火災害以降、山麓の木曽・王滝両町村は再び登山者を受け入れられるよう安全対策に取り組み、平成30(2018)年から令和5年にかけて順次、登山道の立ち入り規制を解除してきた。一方で、安全に登るためには登山者自身の火山防災意識向上が欠かせない。
この10年で、防災無線の整備や携帯電話不感地帯の解消、噴石に耐えられる山小屋の新築・改修、避難用シェルターの設置などが行われ、ハード面の対策は一区切りした。
ソフト対策も進んだ。本年度、木曽町は噴火を想定した登山者参加型の避難訓練を実施。王滝村は関係機関が災害時に円滑に対応できるよう情報伝達訓練を初めて行った。安全登山啓発の担い手として30年には火山マイスターの活動も始まった。
一方、登山者は大都市圏からが多く、県境を越えた安全登山の発信が必要だ。名古屋大学御嶽山火山研究施設と町が共同で令和4、5年に行った登山者アンケートで両年とも愛知県の登山者が最も多く、かつヘルメット持参率が最も低かった。
今夏、初めて名古屋市の名大博物館や名大減災館で啓発活動が行われた。マイスターの竹脇聡さん(64)=木曽町開田高原西野=は「滑落や転倒も相次ぐ中、ヘルメットは『今から火山に入る』という意識付けになる。来年以降も続けていけたら」と話している。