猿の食害 GPSで防止へ 塩尻市洗馬上小曽部で市のモデル事業、本格始動

塩尻市洗馬の上小曽部で本年度、猿による食害を防ぐモデル事業が本格的に始動した。上小曽部では自家消費用として畑で育てている夏野菜の被害が深刻で、住民と市が連携して対策に乗り出した。捕獲した猿に首輪型のGPS(衛星利用測位システム)センサーを装着して放ち、群れの位置情報を把握しつつ追い払いなどに役立てる。
令和4年度に区長を務めた武居英明さん(69)によると、ここ10年ほどで頻繁に群れを見掛けるようになり、被害も増えた。ナスやトマト、カボチャ、トウモロコシなどが食べられ、電気柵を設置しても侵入を試みる若い個体もいるという。
上小曽部では県のニホンザル生息調査の候補地に選ばれたことを契機とし、対策強化への機運が高まった。昨年度には住民らが被害対策協議会を結成。その後、猿以外にも拡大して有害鳥獣被害対策協議会を設けた。今年3月に雌猿1頭を捕獲してセンサーを取り付けた。上小曽部内に置いた基地局を通じ、この雌を含む群れの移動情報をスマートフォンやパソコンで確認できる。
位置情報によると、この群れは20頭ほどで、転作促進研修センターの北側から白石にかけての範囲で主に移動。夜に寝ている場所が民家のすぐ裏側という日もあった。協議会は今年3~8月末に住民を対象とした被害調査(時間帯、場所、食べられた作物など)も実施。センサーで得られたデータと照合して分析・共有し対策に役立てる。
本年度の区長を務める大熊陽一さん(66)は「今後は位置情報を確認できるアプリを住民に普及させたい。10月には追い払いの講習会を開く。群れの頭数自体を減らすことも重要だ」と話している。
市内では北小野地区でも猿にGPSセンサーを装着しようと試みているが8月末現在、まだ捕獲できていない。