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70歳以上の公募展「老いるほど若くなる」 来年で終幕に

 松本市美術館(中央4)が主催し、平成16(2004)年から同館を会場に隔年で開催してきた70歳以上の公募展「老いるほど若くなる」が、来年4~6月に開催する第10回を最後に20年の歴史に幕を下ろす。高齢化社会が進展し、70歳以上をひとくくりとした年齢設定が時代に合わなくなったことが主な理由だ。最後の公募展は規定を満たした全ての応募作品を無審査で展示する「アンデパンダン形式」とし、有終の美を飾る。

 70歳以上の公募展が始まった当時、全国的に高齢者を対象とした公募展は珍しかった。前衛美術家の赤瀬川原平(1937~2014)が平成9(1997)年に提唱した、老化によるマイナス思考をプラス思考に転換する概念「老人力」に基づく美術展で、全国から寄せられた作品の中から審査で選ばれた入賞・入選作品110点を展示してきた。
 公募展の事業予算は1回の開催につき1000万円ほど。グランプリは50万円、準グランプリは25万円、審査員賞6万円、スポンサー賞5万円の賞金が出ていた。第9回でグランプリを受賞した兵庫県三木市の山口敏行さん(73)は「20年の歴史がある公募展で全国的に知名度が上がっていただけに残念だ」と惜しむ。作品を市美術館に搬入した日の翌日に肺がんの宣告を受けたことを思い出として語り、「公募展でグランプリを受賞したことが生きる力になった」と話した。
 市美術館の武藤美紀副館長は「全国的に高齢者も出品できる公募展が増えており、年齢のくくりを設けた公募展は一定の役割を終えたと判断した。最後の公募展は熱意と創意あふれる作品に期待したい」と話している。
 応募期間は12月1日から来年1月15日まで。平面作品でテーマは自由。規格は20号以内。1人1点で出品手数料は5000円。市美術館ホームページから電子申請フォームで申し込む。