2024.9.23 みすず野
「アメリカの野球は、私はもっぱら本で知ってきたように思う」と、作家の常盤新平さんは『ベースボール・グラフィティ』(講談社文庫)を書き出す。昭和56(1981)年から60年にかけて、週刊誌に連載した◆「ニューヨーク・タイムズのスポーツ欄に眼を通していれば、大リーグのことを書けるのではないか、そんな気持ちで、都内のあるホテルの売店でこの新聞を予約した」という。1週間か10日に一度、新聞を受け取りにホテルに出かけて行くのは楽しみだったと振り返る◆日本人選手の活躍が、その日のテレビニュースで、試合の映像とともに流れる昨今とは隔世の感がある。人気選手が出場する試合は生中継もされる。常盤さんが他界されて間もなく12年。現在の様子を見たら、どんなエッセーを書かれるだろう◆「ミラクルA」「巨人の星」などの野球漫画で育った世代だ。大谷翔平選手の50本塁打、50盗塁、今年は休んでいるが二刀流という活躍。大谷選手がいないと仮定して、漫画家がこんな主人公で野球漫画を描きたいと言ったら、荒唐無稽すぎて担当編集者に一蹴されるだろう。それほど桁違いの大リーガーなのだ。