連載・特集

2024.8.25みすず野

 新橋といっても松本ではなく、東京のほうの話。その名を冠した色があることをご存じだろうか。「新橋の芸者に好まれ、流行したことから」(『まいにち暦生活』ナツメ社)その名称となった。明るい緑がかった青色で、洋名はターコイズブルー。金春色の異名も◆『365日にっぽんのいろ図鑑』(玄光社)によると、はやったのは明治時代末期から大正時代にかけて。明治時代になると、海外から化学染料が入ってきて、それまでにはない鮮やかな色が生み出された。そのなかの一つが新橋色だ。ハイカラな色として新橋の芸者たちが、いち早く着物に取り入れた。いつの世も新しい物、流行に女性のアンテナは高い◆独特の艶っぽさがあり、美人画にも好んで使われた。明治から昭和にかけて活躍した日本画家の鏑木清方や上村松園の作品にも見られる◆松本の奈良井川に架かる新橋。歴史をひもとけば、江戸時代に日本海から松本地方に塩を運ぶ「塩の道」の一部だった由緒ある橋だ。今も通行量が多く、交通の要衝となっている。もし、塗り替えの機会が今後あったら、しゃれを効かせて新橋色にしたらちょっと話題になるかも。