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県畜産試験場で暑さに強い牛誕生 雌牛「ワンダー」スリック遺伝子保因

スリック遺伝子を持つ子牛「ワンダー」と、県農業大の学生

 塩尻市片丘の県畜産試験場は、毛量が少なく暑さに強い性質とされる「スリック遺伝子」を持つホルスタイン乳牛の研究を始めた。試験場第1号となる雌牛が誕生し、秋にはさらに3頭が生まれる予定だ。暑熱への耐性や食欲、乳量、繁殖の良さなどの基礎データを蓄積し、暑さに弱い牛の管理生産に苦慮する生産者への一助として、最新の情報を提供する。

 スリック(「滑らかな」という意味)遺伝子の凍結精液を購入し、昨年9月に人工授精で受胎させた。
 第1号の子牛は6月11日に生まれ、「ワンダー」と名付けられた。8月にスリック遺伝子を持つ「保因」と判明した。性質の特徴はまだ分からないが、毛がさらさらとしていて、脇の毛は他の牛より2センチ短いという。研究は試験場内にある県農業大学校の学生が担当しており「暑い所が好き。よく、ひなたぼっこをしている」と、炎天下でも元気な子牛をなでながら話していた。
 乳牛を育てる際は一般に、扇風機で風を当てたり、気化熱で体を冷やすため霧状の水を浴びさせたりといった対応が必要になる。暑熱に強い牛の研究は、生産者に新たな選択肢を示し、経費や労力の負担軽減につながると期待される。
 牛は生後2年目に初めて妊娠・出産できる。2代目、3代目と次の世代の調査も必要で、研究成果を公表できるのは5~6年先だという。酪農肉用牛部の中島純子部長は「一筋縄ではいかないが、農家の皆さんに生産の選択肢としてもらえればと思う」と期待している。