2024.8.13みすず野
夏の庭で、もの干しざおから下がっていたのは、夕顔をむいた細長いかんぴょうだった。独特の匂いが漂う。夏の強い日差しで水分をとばし、乾くと束ねてふたのある缶に保存していたように思う。夏休みの記憶の一つでもある◆夕顔は簡単に栽培できると聞いていた。放っておくとどんどん大きく長く育ち、薄い黄緑色の巨大なキュウリのような形で、畑の隅に転がっていた印象がある。かんぴょうは、夕顔を3センチほどの幅で輪切りにして、包丁で外側からできるだけ薄く長くむいていく。上手にできると途切れることなく1本のかんぴょうができた。その様子が面白くて、両親の作業を見ていたことを思い出す◆家の周りでかんぴょうを作っている人はもういない。職場の農業の大先輩に聞くと、今も作っているという。驚いて、周囲にも同じような家があるか尋ねると、他にはないそうだ。そもそもかんぴょうの需要が随分少なくなったのではないだろうか◆夕顔は、みそ汁に入れたり煮付けたりもした。子どもにはおいしい食べ物ではなかった。6月に長野市で夕顔の食中毒が発生している。苦いと感じたら、食べないことだそうだ。