安曇野市堀金出身の文芸評論家・青柳優の功績を顕彰

安曇野市の臼井吉見文学館友の会が主催する「安曇野の人びとを語る会」は本年度、月例講座で5回にわたり、同市堀金烏川出身の文芸評論家・青柳優(1904~1944)を取り上げている。「名前すら聞いたことがないという地元の人が少なくない」として、功績を顕彰している。
同文学館で7月19日にあった例会では、日本近代文学の研究者・曾根博義氏が青柳を「戦時下で時評や書評を書き続け、時勢に阿ることなく文学と批評の本質を追求し―」などと評論した資料を使ってその人物像に迫った。
旧制松本中学校出身で、同時期に臼井吉見が在籍していた。早稲田大英文科在学中からアナーキズム文学雑誌『世紀文学』を創刊するなど文芸評論に専念し、敗戦前年に亡くなるまでに3冊の評論集を残した。臼井は代表作『安曇野』の第5部で「時代に迎合し、妥協したものは、ただの一行もない」などと青柳の反体制的な気構えを評し、早世を悔やんでいる。
青柳を取り上げる講座の最終回を23日に開き、著書を読み合わせる。同会の企画や進行を担う伊藤正住さん(78)=堀金烏川=は「戦後活躍していたら、大きな人物になっていたのではないか。青柳の気骨が今の時代に教えてくれるものは何か、顕彰の動きが活発になれば」と期待する。
語る会は今年で活動10年を迎える。地元ゆかりの人物を多分野にわたり年間3~4人取り上げ、その生涯に学びを得てきた。申し込み不要で、参加無料。問い合わせは市文書館(℡0263・71・5123)へ。