連載・特集

2024.8.29 みすず野

 新聞製作でほっとするのは、全ての紙面が印刷工程へ送られた後だ。その時間に、屋外から強い雨の音と、風によるもの音が聞こえてきた。台風が接近していて、その影響を心配しながら同僚と翌日の取材の段取りなどを相談していた◆「おまえたちは幸せだなあ。こんなのは台風じゃないよ。そよ風だよ」。そう言ったのは編集担当の先輩。宮崎県の出身で、台風が直撃する九州の風雨がどれほど強烈なものかを話してくれた。もう何年も前だが、あのときの口調はいまもはっきりと耳に残る◆滋賀県から引っ越してきた女性が、最も驚いたのは、家の窓にほとんど雨戸が設けられていないことだったという。言われてみれば自宅はもちろん、近所も、通勤で見る街の民家にも雨戸がない。西日本は頻繁に台風の通り道になるのだと、改めて教えられた◆非常に強い台風10号の影響が心配されている。動きがきわめてゆっくりで、進路予測が微妙に変化し続けている。日本の屋根とも呼ばれる高い山々に囲まれている当地は、大きな台風被害は少ない方だろう。農作物の収穫を前にした時期を迎えている。影響が少ないことを祈るばかりだ。