亡き祖父の生涯を絵本に 穂高有明・耳塚優衣さん対話から紡ぐ

安曇野市穂高有明の耳塚優衣さん(29)が、祖父と重ねた対話に創作意欲を得て制作した絵本『小さなおうちのお星さま』を自費出版した。何げない会話の中で知った戦時中のエピソードを取り入れながら、祖父と自身の等身大の登場人物が互いに心を豊かにしていく交流を描いた。
平成30(2018)年に87歳で亡くなった祖父・田原貞儀さんが主人公。体が弱く、志願した兵役に就けなかった青年が体を鍛えて体育教師となり、家族や周囲との愛情を育みながら人生を充実させていく生涯を、主人公と晩年に出会う耳塚さんこと旅人が回想していく物語だ。
耳塚さんは、戦争に関わる祖父の記憶や感情に触れ「孫にも会え、戦地に行けなくて良かったと口にしながら、兵士になれなかったことを引きずっていたことに驚きや複雑な気持ちを抱いた」という。「当時のことを身内から直接聞ける最後の世代。私たちにはない価値観や考え方があったことを残したい」との思いが創作を支えた。
タムラユイの旧姓で出版し、自ら絵も手掛けた。長野市に生まれ、信州大学医学部保健学科を卒業後、保健師として働き、結婚。2歳と5カ月の娘2人を育てている。創作を続けながら、異世代の居場所づくりなど保健師の資格を生かす活動の立ち上げも思い描く。耳塚さんは「それぞれの世代に役割がある。社会的な孤立や孤独が健康リスクにもなる中、相互に関わり合う大切さを伝えていかれたら」と話す。
B5変形判28ページ、定価1320円。アマゾンなど大手通販サイトで購入できる。