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農民美術「こっぱ人形」朝日で企画展

德武さんが手掛けたこっぱ人形。自由で多彩な表現が目を引く

 農民美術の一つとして大正から昭和初期にかけて全国各地に広まった手彫りの木製人形「こっぱ人形」にスポットを当てた企画展「こっぱ人形ってなぁに?」が6日から、朝日村の朝日美術館で開かれる。農民美術運動が興った上田市を拠点に制作に取り組む農民美術作家・德武忠造さん(72)=上田市=をはじめ、德武さんの教室で学ぶ受講生らが手掛けた作品、運動初期に作られた人形など約430点を多彩に紹介する。農閑期の副業として盛んに作られたのは15年ほどだが、全国にファンがいて近年は若い世代からも注目が集まっているという。8月25日まで。

 運動は大正8(1919)年、欧州で美術を学び帰国後上田市を拠点にした洋画・版画家の山本鼎(1882~1946)の提唱で広まった。山本はロシアで出合った農民の手工芸品に感銘を受けたという。政府の後押しで上田市大家に設けた農民美術研究所を中心に全国で講習会が開かれ、人形は都市部で販売され土産品として人気を集めた。
 人形は高さ3~5センチ程度の小さくかわいらしいサイズ。身近で手に入る木片を彫刻刀などで削り、色付けしてしてある。農作業、祭り、子育て、釣り、登山など生活のさまざまな場面や、地域ごとの服装など風俗文化が表現されている。
 展示品も実にさまざまな人形がある。スマートフォンを手に「自撮り」する熊、マスクを着用した女性など現代の作品もある。德武さんは「身近なモチーフを自由に形にする人形で、一点一点愛着を感じる」と話している。
 朝日村でも大正に農民美術組合があった記録があるが資料や作品はなく、同館が情報を募っている。午前9時~午後5時。月曜休館。