連載・特集

2024.7.24 みすず野

 江戸時代の人はウナギを裂き、かば焼きにすることに成功した。酒のさかなだったが消費が伸びない。かば焼きをご飯の上に盛るうなぎ飯が考案され人気食に。丼に盛りうな丼と呼ばれた。重箱にも盛り付けてうな重となり、見栄えがいいことからうな丼をしのぐ。うな重時代への移行は60年ほど前だという。『天丼かつ丼牛丼うな丼親子丼』(飯野亮一著、ちくま学芸文庫)で知った◆正統派古典落語の第一人者として活躍した古今亭志ん朝さんは、若かったある時、自分の守り本尊が虚空蔵菩薩で、ウナギがその使いであることを知り、以後、大好物だったウナギを断った。平成13(2001)年に63歳で亡くなるまでウナギを口にしなかった◆「いかにも芸人らしい信心深さ、というべきだろう。落語家で縁起をかついだり、信心をしている人は多い」(『花は志ん朝』大友浩著、ぴあ)と。「鰻の幇間」の演目は高座にかけていた◆葬儀は落語協会葬として執り行われた。「弔辞で、鈴々舎馬風が『むこうで腹一杯鰻を喰えよ』と遺影に語りかけていた」(『昭和の藝人千夜一夜』矢野誠一著、文春新書)という。きょうは土用の丑の日。