連載・特集

2024.6.14 みすず野

 身の回りにあって、日々の暮らしを支えているのは、気に入って選んだものばかりだ。できればずっとこのままでと思うがそうはいかない。壊れたり動かなくなったりして、やむなく別のものに換えることになる◆車がそうだ。買い換えるつもりなどないのに、故障で動かなくなる。できるだけ長く乗りたいと思うが再起不能の診断を下されて手放すことになる。気に入ったものほど、この傾向が強いような気がするが、思い過ごしだろうか◆スマホが全く反応しなくなった。不調が続いてはいたが、電源が入らない。店に持ち込んだものの、休日で混んでいて、予約を取って帰った。予約した日の朝、それでもと思い電源を入れると、見慣れた画面がゆっくり現れた。時間にして1分ほどだろうか。よみがえったかと喜んだが、間もなく静かに消えていった。そのまま二度と作動しなかった◆擬人化するのはばかげていると承知しながら、こうしたことがあると、最後のメッセージを発したのだろうかと思ってしまう。スマホは毎日、どこへ行くにも持ち歩く。これは3年余り使用した。その時間をともに過ごしてきたのは間違いないのだ。