工芸で交流深め40回目 クラフトフェアまつもと

松本市あがたの森公園で毎年5月の最終週に開かれる全国屈指の野外工芸展「クラフトフェアまつもと」が、40回の節目を迎える。地元作家ら45組で始まり、今や選考を経た260組前後が出展、県内外から約4万人が来場する一大イベントになった。青空と新緑の下、作家同士、作り手と使い手が交流する場として歴史を重ね、今年も25日と26日に266組がブースを並べる。
昭和60(1985)年、民芸運動に触発された若い作家らが米国や英国で野外工芸展に触れたことをきっかけに「新しい手仕事のムーブメント」として全国に先駆けて開催。県外出身のメンバーが多かったため初期から各地の仲間が集い、それぞれの地元にもフェアが広がっていった。
創設メンバーで、松本のフェアを主催するNPO法人松本クラフト推進協会理事の小田時男さん(68)=松本市県2=は、一人でものづくりに向き合う作家にとって「思いやエネルギーを共有できる場があることが大事」と実感を込める。そうした作家の情熱と、世代交代しながら支える事務局スタッフの尽力が40回をつないできたとする。
回を重ねて規模が拡大した松本のクラフトフェアは、多い年には応募が1500組を超過。自治体の視察や業者が増え、雑誌の影響で来場者が押し寄せて駐車場問題が取り沙汰されるなど、初期の「のんびりした雰囲気」からは遠ざかった。
一方、体験や実演で次世代を育てる秋の「クラフトピクニック」が派生し、まち全体に目を向ける月間イベント「工芸の五月」に発展するなど時代に柔軟に対応してきた側面もある。会って話しながら実物に触れ購入してもらうスタイルや、信州らしい景観を満喫できるあがたの森の"場の力"は普遍的な魅力となっている。
協会の伊藤博敏代表(66)は「40回はあくまで通過点」と捉え、「地域に貢献し、松本を魅力的にすることも考えながら成長していけたら」と先を見据えている。