連載・特集

2024.4.11 みすず野

 先日の「ヤングらんど」は、桜餅の葉を食べる、食べないがテーマで、結果は半々だった。どんな食べ方をしてもいいと思うが、葉をむいて食べるのは、桜の葉の香りがあるだけに、もったいないとは思う。でも、好き好きで、こうでなければならない、などというほどのことではない◆春の和菓子を三つ挙げろといわれれば、うぐいす餅、草餅、桜餅だろうか。この中では桜餅に軍配を上げる。江戸時代、八代将軍徳川吉宗は、白砂糖の国産化を目指し製糖業の発展に寄与したと『和菓子を愛した人たち』(虎屋文庫、山川出版社)にある◆吉宗は隅田川東岸の向島の川堤に桜を植えるよう命じ、名所をつくった。花見客でにぎわうこの地で、桜葉を利用した「長命寺の桜餅」が生まれ、人気を集めたのだという◆ドイツ文学者で、横綱審議委員長を務めた高橋義孝さんは「知人が、向島へ行く用事がありましたので、と、桜餅を一籠持ってきてくれた。こういうことは東京の人間でないとしない」(『蝶ネクタイ先生の飲み食い談義』(河出文庫)と。「桜餅の身上は、あの桜の葉の香りである。それから柔らかな皮である」と結んでいる。

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