連載・特集

2024.4.10 みすず野

 記者として現場に出るようになると、取材対象が大まかにどんな内容なのかを、できるだけ早く把握できるようになれと何度も教えられた。全体を把握できないと細部には踏み込めない。多少経験を積んでも、簡単に理解できない取材はたくさんあった◆具体的な大まかな把握方法として、大勢集まる集会などの人数のつかみ方を教わった。現場で数えた30人、50人の塊がいくつあるかを見る。火災現場で建物の大体の面積の測り方は何度も説明されたが、あまり身に付かなかった◆ブランケット判(小紙の倍)新聞の見開きの対角線が約1メートルというのは『よくわかる測り方の事典』(星田直彦著、角川新書)で知った。ひとつ覚えているといろいろ応用が利く。具体的な数字を手にして取材に臨むのは、役に立つ道具を携えていると同じこと◆時間の計り方も徐々に覚えた。落語家は、この時間で演じてくれと言われれば、きっちりそれに収めると、人間国宝だった柳家小三治さんが話していた。締め切り間際の取材で、指定された記事量を過不足なく時間内に送稿できると、ちょっぴり自信が付く。もちろん肝心なのはその中身なのだけれど。

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