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能登の酒 木祖で醸す 湯川酒造店 被災地の酒 仕込み代行

白藤酒造店から預かった酒米で仕込んだ能登の酒を瓶詰めする湯川酒造店の蔵人たち

 木祖村の湯川酒造店が、能登半島地震で被災した石川県輪島市の白藤酒造店から預かった酒米で仕込みを代行している。「能登の酒造りを絶やしたくない」との思いを込め、木祖の水で醸した「奥能登の白菊純米吟醸」は、今月末にも出荷体制が整う。

 1月31日、親交のあった同県能登町の酒蔵と白藤酒造店に飲料水を届けた際、「酒米を預かり醸造させてほしい」と提案した。湯川酒造店の湯川尚子社長(44)は「『大丈夫です』とおっしゃる先方に遠慮があるかもしれない。『断られればそれまで』の思いだった」と話す。
 「白藤の仕込み配合に準じた形でやらせてもらう」と約束をして預かった酒米は1㌧。「白藤の酒を飲んで応援したい」とする愛飲家の思いをつなぐために最短の醸造スケジュールを組み、2月4日には仕込みを開始した。水やこうじの割合、酒のイメージなどは、両蔵で密に情報を共有しながら進め、今月12日に無事搾り(上槽)を迎えた。
 13日、四合瓶(720㍉㍑入り)2300本の瓶詰め作業を見守った杜氏の湯川慎一さん(56)は、初めて使う酒米での手探りの仕込みを「白菊を愛する皆さんの期待を裏切りたくない思いもあり、緊張感があった。柔らかな甘みが口の中で程よく消えていくイメージの、バランスの良い純米吟醸ができたと思う」と安どした。
 瓶詰めされた酒は、石川県のほか、長野県内でも販売される。

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