連載・特集

2024.3.25 みすず野

 「私は新聞が大好きで、配達された直後に読み、朝食後に読み、更に翌日、目を通し、翌々日、また読む。同じ紙面を四度、読む。最後に関心のある記事と、書籍広告を切り抜く」というのは、作家の出久根達郎さんである(『随筆最後の恋文』三月書房)◆こうして読んでも、記事の見落としがある。紙面の隅から隅まで読むために、通勤電車で読むように、小さく折り畳んで読むと、記事の読み落としがなくなる。「新聞は広げて読むと、どうしても読む記事を選んでしまう。活字の大分量に圧倒されて、つい拾い読みをしてしまうのである」と◆日本新聞協会が発行している『新聞研究』3月号は、昨年の新聞発行状況を掲載している。部数の減少に歯止めがかからない。新聞社・通信社の従業員はピーク時のおよそ半数まで減少したとも◆隣組に2、3人、出久根さんのような人がいれば部数の減少が止まるかも。入学や入社、転勤などで、これからこの地で暮らす人たちにも小紙を購読してもらえたらと願う。出久根さんは「隅々まで読むと、新聞の面白さは、数行の小さな記事、あるいは広告、お知らせにある、とわかる」という。