連載・特集

2024.2.27 みすず野

 仕事が一区切りになるのは、おおむね午後2時近く。昼食に出る頃にはほとんどの店は休憩時間になってしまう。食べるものの好みもあるから、その時間営業していている店から選ぶと、足を運ぶ店は大体決まってくる◆その中のラーメン店にやって来て、とっくりの形をした1合パックの酒を、そば店で昔の人がよくやった「台ぬき」のような飲み方をしている男性がいた。種もののそばだけ抜いて食べながら飲むやり方で、メンマやチャーシューをさかなにしていたようだ。短時間で飲み終わるとさっと帰る。80歳は過ぎているようにみえたが、酒を飲む楽しさがそこに完結しているようだった◆そば店で、昼間に独酌を楽しみたいというのが長年の願望だ。きわめてささやかな願いだがなかなか実現しない。若い頃は、生意気そうに見られるのではとつまらぬ心配をした。もう年齢的には何の問題もない◆それどころか、あの老人は昼間から一人で酒など飲んで、と別の心配をされそうだ。家から歩いて行かれる範囲にラーメン店2軒、すし店や洋食店、居酒屋もあるのにそば店がない。暖かくなったら休日にバスに乗って出かけようか。

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