地域の話題

阪神・淡路大震災から29年 変わらぬ思い胸に能登の被災地で炊き出し

 平成7(1995)年の阪神・淡路大震災から29年の17日、神戸市の被災地で展開した支援活動を原点とする松本市の炊き出し隊が、1日に発生した能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県に入った。厳しい寒さの中で避難生活を送る人に、おいしく温かい食べ物を届けたい―。変わらない思いを胸に、湯気の立つ料理を提供した。

 29年前、神戸市長田区で1カ月にわたる炊き出しをして以降、全国各地の被災地で活動をしている「松本市炊き出し隊みらい」が、輪島市門前町の避難所2カ所に赴いた。
 5人が午前5時に車2台で松本を出発し、6時間半をかけてたどり着いた。倒壊家屋が至る所にあり、水道が復旧していない避難所は雪解け水と雨水をためて、トイレに使っている。避難住民は高齢者がほとんどだ。夕食だけだった予定を変更して昼食の提供も決め、昼は炊きたてご飯のしらす丼とおかずの詰め合わせ、夜はハンバーグはやしと豚汁、計420食を振る舞った。
 「避難所にいるとは思えない食事ができた」と喜ばれたといい、炊き出し隊みらい代表で、レストランどんぐり経営の浅田修吉さん(65)は「そんなふうに言ってもらえて、また来たくなる」と話した。1月17日は「俺の炊き出し人生が始まった記念日」と表現し「復興にはかなりの時間がかかるだろう。1年間は(炊き出し支援を)続けなくては」と覚悟を語った。
 29年前から浅田さんと行動を共にしてきた瑞松寺住職の茅野俊幸さん(57)は9日に能登に入り、炊き出し受け入れの調整と、避難住民の支援に当たってきた。「13日間温かいものを一度も食べていなかったお年寄りもいた」。円滑な被災者支援の仕組みが今も構築できていない行政の課題を語り「ここで学ばなくては、また同じことが起きる」と指摘した。
 18日は七尾市で120食の炊き出しをする。