「第二の人生」尺八演奏家に 松本市役所を退職した両角昌幸さん独演会

松本市役所を今春に退職した両角昌幸さん(52)=松川村板取=が、尺八演奏家として新たな道を歩き始めた。大学時代に尺八と出合い、仕事の傍ら30年間演奏を続けてきた。「プロとして腕を磨き、心を揺さぶるような尺八の美しい音色を届けたい」と願い、プロとして初の独演会を下馬出しホール(大手4)で26日に開いた。
会では、古典と現代の5曲を披露。江戸時代に虚無僧が修行で吹き伝えた尺八本曲の中で最古とされる「虚空」や、長崎市にある片足で立つ鳥居をうたった現代曲「片足鳥居の映像」などを情感込めて奏でた。曲により吹き分ける複数の尺八も見せ、曲の背景を丁寧に説明した。30人が訪れ、市内の50代男性は「初めて尺八を聞き、息づかいが感じられてすばらしい演奏」と話した。
両角さんは松本深志高校から北海道大学に進学し、学生サークル・北大邦楽研究会で尺八を始めた。演奏家・菅原久仁義さんに師事し、NHK邦楽技能者育成会を卒業。邦楽の仲間らと国内外で演奏し、平成30(2018)年に英国・ロンドンの国際大会で3位入賞も果たした。
良い演奏ができた時の充足感や聞いてもらう喜びを感じる一方、十分に練習できないことや同じ門下生の若い世代の上達を目の当たりにして歯がゆさがあった。「限られた人生。奏者として技術を高めたい」と活動30年の節目に夢をかなえた。
自宅で主宰する教室などで指導にも当たる。大学時代に初めて音を出せた感動は今でも忘れず「良い音を出す喜びを感じてほしい」と生徒に願う。プロになり責任の重圧もあるが「尺八が響かせる音色と旋律の美しさを皆さんに届けたい」と志を高くする。