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名物店員を太鼓で見送り 塩尻の文具店・マルナカ 勤続51年の後藤美穂子さん退職

熱演に喜び、拍手する後藤さん(中央)

 塩尻市みどり湖の文具店員・後藤美穂子さん(89)が今年、51年間勤続した同市大門泉町のマルナカを退職した。同店は文具のほか和太鼓、ばちなども扱い、太鼓愛好者の来店も多い。〝街の文具店の店員さん〟として半世紀にわたり勤め、太鼓の音色を好む後藤さんのために、このほど市内で開かれた送別会に市内の和太鼓3団体の有志が集結し、サプライズで熱い演奏を贈った。

 後藤さんは30代で夫を病気で亡くし、1歳と3歳の子を育てるためマルナカで働き始めた。自宅からバイクで通う姿も地域の人に親しまれてきた。支店の店長も務めた。
 3代目社長の中村健一さん(52)は「地域の人のことなど何でも知っており、頼りになる存在だった」と語る。後藤さんは阿禮神社の近くで育ち、幼少期から定時に神社で打ち鳴らされる太鼓の音色に親しんだ。同店に太鼓連・桔梗太鼓が誕生してからは演奏会に足しげく通い、応援した。
 送別会での〝どっきり演奏〟は桔梗太鼓の宮幸生代表が企画。信州塩尻阿禮太鼓、塩尻五百渡太鼓保存会も含め有志13人が会場の仕切りの向こう側に待機した。宴が始まるといきなり仕切りが取り払われ、ステージが出現。打ち手らはこん身の力を込めてばちをふるい、3曲と祝いの歌を披露し退職を祝った。
 子供の頃から店に通った桔梗太鼓の増田くみさんは「いつも店にいてくれた。これからも演奏も見に来てください」とあいさつ。後藤さんは口を両手で押さえて驚いた後、破顔し「思いがけないことで感激している。本当にありがとう」と喜んでいた。