駅の構内から消える時計...乗客に戸惑いや疑問、気に留めない若者も

JR東日本の駅構内から、時計が姿を消している。時刻表とは切っても切り離せない時計だが、スマートフォンの普及などを背景に必要性は薄れてきていると同社が判断。経営合理化の一環として、撤去を進めているという。JR東日本長野支社管内でも10月末現在8駅で撤去が完了した。若年層を中心に気に留めない向きはあるものの、戸惑いや疑問の声は少なくない。
同管内で撤去が完了したのは塩尻、広丘、平田、信濃大町、上諏訪、茅野、篠ノ井、川中島の8駅。対象となっているのは改札やホームの時計だ。
中央東線と西線が交わり乗り換え客が行き交う塩尻駅では、昨秋に改札の、今秋にホームの時計が撤去された。
「え!うそ!そんなばかな」。今月2日、塩尻駅を利用した兵庫県の男性(79)はそう驚き「発着の時刻と時計をパッパと見比べるでしょ。あれができないの不便だよ」。観光で訪れた神戸市の女性(72)は「荷物で手がふさがっている時や、時刻の分かる物を持っていない時はどうすれば?」と首をかしげた。女性の夫(76)は「日本の駅の時計は、正確性や信頼性で世界に誇れるものなのに」と惜しんでいた。
一方、茨城県から訪れた男性会社員(38)は「時間はいつもスマホで見る」、通勤で駅を使う塩尻市の女性公務員(29)は「時計がなくなったことに気付かなかった」と話した。
JR東日本長野支社広報室によると、背景には設備の維持・更新のための投資の抑制や、固定費の削減を進める狙いがある。生産年齢人口が減少する中、時計のメンテナンスに携わる人材の確保も課題という。同社には苦情の声も届くというが、広報室の担当者は「駅の実情をみながら維持・更新するケースもあり、全ての駅から撤去するわけではない。ご不便をお掛けすることもあるがご理解いただきたい」と話している。