連載・特集

2023.11.9 みすず野

 松尾芭蕉ゆかりの地を訪ね、そこで自ら詠んだ句を収めた『芭蕉の風景 上・下』(ウェッジ)を一昨年著し、読売文学賞を受賞した俳人・小澤實さんの第4句集 『澤』(角川書店)が刊行された。40代半ばから50代半ばまでの作品を収める。小澤さんは小学生のころ、旧楢川村(塩尻市)で育った。「秋晴や古木のいろに奈良井宿」◆『芭蕉の風景』で「ぼくの故郷は長野県松本市」と書いた小澤さんは『澤』に収めた句が「毎月ふるさと信濃に帰り、その山々とも向き合ったので、おのずと信濃の山の句も多くなった」と。「常念の奥の青空年立ちぬ」◆書名は平成12(2000)年に創刊した主宰する俳句雑誌の誌名『澤』から取られている。「『澤』と名付けた会に多くの仲間が集ってくれた。そして、着実に年月を重ね、二十周年を迎えることがかなった」といい、その記念祝宴はコロナ禍で延期していたが、この秋に執り行うと。「御柱八十五度やなほ立てむ」◆「『澤』に関わったすべての方に感謝したい。とりわけ、ともに俳句を学び楽しんできた『澤』の仲間に深謝をささげたい」と結んだ。「たかだかと鳥帰るなり岳の上」