連載・特集

2023.11.28 みすず野

 風呂敷を見たことがない人はいないだろうが、最近使ったという人になると、かなり少ないように思うがどうだろう。レジ袋有料化でさまざまな買い物用の袋が使われている。でも、風呂敷をそのまま使っているのは見ない。1枚の布の四隅を結び袋状にした使用法は見る◆外国人には風呂敷を「フレキシビリティー(柔軟性、適応性)」などと呼ぶ人もいるというが、どんな形のものも包み込む重宝さがある。大学に入学して、風呂敷を使っている先生が多いことに驚いた◆テレビの語学講座で講師を務めていた教授は、本だけで一山ほどもある風呂敷包みを手に通勤されていた。教壇の机の上で包みをほどき、授業が終わるとまた包み直し、きれいに結んで運んでいかれた◆結ぶという行為が子どものころから苦手で、きちんと結べないまま大人になってしまった。昔の人はきれいに包み結ぶことを「自分自身の気持ちを相手にそのまま伝えることだと考えた。自分の心を形に表しているからである」(『包み結びの歳時記』額田巌著、講談社学術文庫)という。一念発起、今度こそきれいな結び方を覚えて、風呂敷を持ち歩いてみたい。