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特別展閉幕まで2週間 山崎貴監督「大勢の来場者に感動」

特別展の閉幕を前に感想を語る山崎貴監督

 7月半ばから3カ月半の会期で開催されてきた、松本市美術館の特別展「映画監督 山崎貴の世界」は29日の閉幕まで2週間となった。市内出身の山崎貴監督(59)の映画製作を紹介する初の大規模展覧会として、知られざる舞台裏を通史的に紹介。これまでに延べ4万人以上が来場した。閉幕を前に、監督自身の感慨を聞いた。

 ―閉幕が迫った。
 非常に多くの人たちの力で出来上がった展覧会を、すごく大勢の人が見に来てくれて楽しんでくれた。その姿を見ることは得がたい経験だったし、心から感動した。映画監督の仕事は最終的な映像がアウトプット。途中経過を見てもらう機会はなかなかないが、結果的に長年の仕事をふり返ることができたし、あらためて多くの人に支えられているんだと実感した。故郷での開催も大きな喜びだった。
 ―超絶技巧の物作りを紹介する展覧会でもあった。
 展示を見た山田洋次監督が「山崎君、こういうすごい職人たちに支えられているんだね」と仰ってくれた。僕はCGを多用する映画監督だと思われているけれど、ミニチュアや模型を使った映像製作が原点でもある。CGが進歩してCGでいろいろなことができるようになり、最近は逆にアナログがぜいたくな手段になりつつあるが、これからも手作り感のようなものはできるだけ維持していきたい。
 ―展覧会場内の巨大スクリーンも見応えがあった。
 僕らが今、ネット配信とかに対抗して劇場に足を運んでもらうためには体感できるレベルの作品を作るしかない。家では決して味わえない迫力と臨場感、そういうものが劇場にはまだあるんだということを愚直に信じ「やっぱり劇場で見て良かったね」と思ってもらえるものを作り続ける。そこに映画が生き残る道があるのではないか。
 ―映画作りの面白さとは何か。
 例えばシャワーを浴びながら思い付いたことが最終的なシナリオになり、数カ月後、数年後にまるで本当に見た現実であるかのように形になる。言うならばそんなホラ話をみんなが見て、その世界にどっぷりつかりながら泣いたり笑ったりしてくれる。不思議なことだなぁと思うし、このギャップが面白い。
 ただしとっぴな話であるほど上手な人たち(役者)やいろいろな人たちの力を借りなければ現実にはならない。今回のような展覧会ではそのことがあらためて突きつけられ、一人じゃないんだなぁと感慨深かった。