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松本市水道事業の経営が悪化 将来の料金改定も視野に

大正時代に敷設された給水管の更新工事。老朽化対応の費用負担は当面続く

 松本市の水道事業の経営が厳しさを増している。昨年度決算は当期純利益が1546万3000円と21年連続の黒字になったものの、物価高、燃料高などで前年度比1億7327万円(91・8%)減と黒字幅が激減した。料金収入の基となる給水人口は減る一方、老朽管路の更新費がかさむ構造が続き、令和7年度には赤字転落が見込まれる。市上下水道局は「将来的には水道料金値上げも検討せざるを得ない」としている。

 給水人口は少子高齢化で昨年度末時点で前年度比603人減の23万4733人と減少が続く。一方、高度経済成長期の整備が多い既存管路の多くは一斉に更新時期を迎えつつある。市は市街地を中心に工事を進めるが、業者の担い手不足もあり、更新した管路延長の割合は昨年度0・3%にとどまった。
 昨年度は物価高や労務単価の上昇が追い打ちをかけ、維持管理などの業務委託費がかさみ、収益悪化の要因となった。当期純利益が1億円を下回ったのは平成の大合併以降初めてで、昨年度は工事などに必要な積み立てを見送った。市上下水道局総務課は「経営状況は極めて厳しく、早急に手を打たなければならない状況だ」と危機感を強める。
 料金の引き上げは、消費増税時を除いて昭和63(1988)年以来行っていない。市監査委員は決算審査で「今後見込まれる料金改定には市民の理解が不可欠で、現状を広く周知すべき」と指摘している。同課は、料金引き上げは将来的な選択肢の一つとした上で「まずは上下水道事業経営審議会に現状を理解してもらい、その後市民向けにもきちんと周知したい」としている。