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加助の伝説ひもとく 貞享義民記念館で企画展

始まった企画展と丸山さん(右)

 江戸時代に松本藩で起こった農民一揆「貞享騒動」のリーダー・多田加助の伝説をひもとく企画展「加助伝説―その男、怨霊か、英雄か」が30日、安曇野市三郷明盛の貞享義民記念館で始まった。英雄視され、慕われ、たたりと恐れられた「義民伝説」の成り立ちを紹介している。29日まで。

 貞享騒動では、過酷な年貢に苦しむ農民を救おうと立ち上がった加助ら28人が処刑された。加助は死に際に「2斗5升」を絶叫して松本城をにらんだため、天守が傾いたと言われた。
 展示では、騒動に加わらなかった村による加助供養、加助を処刑した水野家による供養などを紹介。江戸末期にヒットした農民一揆をテーマとする歌舞伎の影響で、明治~大正時代には自由民権運動と相まって加助が英雄視され、松本城を傾けたという伝説を創作した小説や戯曲が発表された経緯などを丁寧にひもといている。
 後半部分では、松本市沢村3の団体役員・丸山哲治さんが検証した明治時代撮影の天守が傾いた松本城の写真について展示している。傾きはレンズで生じる画像のゆがみであること、特定した撮影年代と同時期に撮影された天守の写真に大きく傾いた様子はないことなどを解説している。AI(人工知能)でカラー化した古写真で当時の様子も鮮明によみがえっている。
 丸山さんは、松本城天守が傾いた写真について「加助伝説があったからこそ、誰もが100年間にわたって加助が天守を傾けたと信じていた。伝説の大きさを象徴する1枚。地元の方に足を運んでほしい」と語る。
 入場無料。15日午後1時半から、三郷公民館で丸山さんの講演会「加助が傾けた松本城」がある。定員は先着順に60人。資料代で100円。