連載・特集

2023.10.12 みすず野

 年齢からして一つか二つ先輩だろう。約40年前にあがたの森から横田へ移った信州大学思誠寮の最初の寮生という。懐かしさに駆られて寮を訪ねたところ、生い茂る雑草に心を痛め〈寮の建物は在寮生だけのものではないのですよ〉と諭す◆投稿欄にあった。「お説教」だけならさほど感じ入らなかったかもしれないが〈当時の寮生たちに声を掛け、草刈り、掃除、片付けを一緒にさせてもらいたい〉とつづっておられる。旧制高校時代から受け継ぐ伝統の重みや〈学生自治の誇り〉を垣間見る思いだった◆わが身を省みると、つい最近まで「近頃の若いモン」に一言ありげな年代の人たちを煙たがっていたのに、気付けば「近頃の―」と言う側に片足を突っ込んでいる。「自分のことを棚に上げて」となっていないか。言うばかりでなく自らやってみせることも大事だと思う。もちろん投稿くださった男性のように、そう心掛けている方がほとんどなのだが◆われわれの時代とは経済環境も異なり、アルバイトと学業の両立で精いっぱい―との言い分も想像に難くない。先輩の〈一緒に〉の声掛けを「若いモン」はどう受け止めるだろうか。