火山防災の充実 教訓胸に 御嶽噴火災害から9年 王滝村で追悼式 遺族、碑に触れ「来たよ」

死者・行方不明者63人を出した平成26(2014)年の御嶽山噴火災害から丸9年となった27日、王滝村の松原スポーツ公園で犠牲者追悼式が開かれた。遺族や地元関係者ら約50人が、噴火発生時刻の午前11時52分に黙とうをささげた。今年は噴火以来立ち入りができなかった王滝頂上―剣ケ峰間の尾根筋「八丁ダルミ」が登山者に開放された再出発の年でもあり、火山防災対策のさらなる充実と、災害の記憶を次世代へつないでいくことを誓っていた。
木曽町と王滝村が主催した。実行委員長の越原道廣・王滝村長は「人命を第一に考え、火山防災対策にまい進することを固く誓う」と式辞を述べた。
次男・祐樹さん=当時(26)=と、その婚約者・丹羽由紀さん=当時(24)=を災害で亡くした所清和さん(61)=愛知県一宮市=が遺族を代表して言葉を寄せた。八丁ダルミの安全対策は十分ではないとした上で「今の状態で安全を向上させるには二重、三重の対策が必要。柔軟性をもって最大の対策を願う」と述べた。
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「今年も来たよ」。野口弘美さん(65)=安曇野市=は噴火に巻き込まれた夫・泉水さん=当時(59)=の名前が刻まれた芳名碑をいとおしげになでた。「9年は長いけど、とても短い。思い出をたどっているうちに、一つ一つ消化できたのか新しく頑張ろうという気持ちが湧いてきた」
7月の慰霊登山で八丁ダルミを通って剣ケ峰まで登り、泉水さんの足取りをたどることができた野口さんは27日朝、王滝村の田の原で、被災者家族らでつくる「山びこの会」の安全登山の啓発活動に初めて参加した。「みんなの登山の安全を願って、同じことが起きないようできることをしていきたい。旦那さんが道しるべをつくってくれたと思いたい」と前を向いた。