地域の話題

企業の空き家活用に成果 木曽町 補助制度創設 地域課題解決へ好循環

改修が進む開田の古民家を会場に、ネパール料理を味わいながら国際交流も楽しむNPOのサポーターたち(マヤ提供)

 空き家の活用に向け、木曽町が事業者向けに昨年度創設した「企業版空き家活用補助金」の活用企業〝第1号〟の取り組みが始まり、副次的な成果も上げ始めている。企業は、開田高原の古民家を拠点に農業体験の場を提供。その活動は地域農業の担い手不足の緩和につながり、農作業を体験する学生の収入と経験を積む機会にもなる。空き家所有者にとっては、思い出が詰まった建物が有効活用される。さまざまな地域課題の解決を目指す好循環となって動き出した。

 初の補助金活用企業となったのは、ネパールなどを中心に国際的な社会貢献活動に取り組む認定NPO法人レアーレワールド(静岡県伊東市)。代表理事の三好彩さんは開田高原出身で、フェアトレード店を運営する企業「マヤ」の社長も務めながら雑貨の輸入販売を手掛け、環境問題や途上国の雇用創出に取り組んでいる。NPO・企業双方の特性を生かして事業を進める。
 昨年度購入した古民家の改修を進めながら、今夏は、NPOの活動を支えるサポーターを関東圏から招待して農村での暮らしを体感してもらい、ネパールの食文化に触れるひとときも設けた。今後は、国際交流の場としての利用も予定する。三好さんは「一人でも多くの方が農業の大切さを知る機会になれば。住民との交流を通して木曽に脈々と受け継がれている『生活の知恵』を学び、文化交流にもつなげたい。地域課題の解決の一端を担いたい」と意欲を語る。
 町にとっては、若者の流入や知名度向上、地域の活性化にもつながる図式が構築された格好だ。町の移住定住・空き家対策を担う町民課の担当職員は「地域課題を解決したいと言ってくれる企業をきっかけに、全ての関係者にとってメリットがあるモデルケースが構築されたともいえる。地域農業の伝承や温故知新のスピリットを引き継いでいく機会にもなる」と話している。

 企業版空き家活用補助金 木曽町内にある空き屋を福利厚生施設やテレワーク・サテライトオフィスとして再利用する事業者などに対し、空き屋の購入費や改修費を補助する制度。費用の2分の1を、80万円を上限に支援する。▽町が運営する「空き家情報登録制度(空き家バンク)」の登録物件であること▽整備した空き家を使った事業を5年以上継続する―などの条件がある。