連載・特集

2023.9.18 みすず野

 片仮名表記は近頃のはやりらしい。松本城北側の鷹匠町に集いの場「タカノバ」がオープンした。天守を望むウッドデッキで飲食が楽しめる。缶バッジやメモ紙といった松本土産は観光客に喜ばれそう◆町名の通り江戸時代、鷹匠が住んでいた。タカ(鷹)を飼育・調教して藩主の鷹狩りにお供し、鷹や獲物を献上する。二本松泰子さん著『鷹書と鷹術流派の系譜』によると、自ら飼育法を工夫して書き残す当主もいた。首尾よくいけば褒賞や禄高の加増にあずかれた一方で、一つのミスでも閉門(謹慎)を仰せ付けられる◆一口に調教といっても誇り高い猛きんだ。信頼を得るのが難しく、そうそう言うことを聞いてくれない。投げるようにして飛び立たせる猟法を〈羽合〉といい、呼吸ぴったり技が成功した境地は人馬一体ならぬ〈人鷹一体〉と表現される。諏訪流鷹匠・大塚紀子さんの著書に教わった◆さてタカノバの運営を担う地元の人たちが目指すのは、二つの国宝をつなぐ架け橋。旧開智学校校舎の耐震工事が終わる来年秋に向けて、軌道に乗せられるかが鍵となろう。まず市民の皆さんに足を運んでいただけたら、ありがたい。