戦中の体験「昨日のよう」 松本の横田國政さん 飛行場建設、兄の死語る

松本市文書館で12日、親子平和教室が開かれ、太平洋戦争中に陸軍松本飛行場の建設に従事した松本古文書研究会長・横田國政さん(95)=松本市元町2=が戦中の体験を語った。勉学よりも勤労にささげた青春時代、飛行場建設の思い出、兄の戦死などを「昨日のことのよう」に振り返り「(歴史の)証人として本当のことを伝えたい」。同館と市平和推進課が共催し、小学生ら14人が耳を傾けた。
松本商業学校(現松商学園高校)在学中、戦況悪化に伴い学徒動員で駆り出された。授業料は安くなく、母親には勉学に励むよう言われたが「国の政策で勉強したのは1年だけだった」。出征で男手がない農家の手伝いや開墾に、時に泊まり込みで従事したという。
陸軍松本飛行場の建設に出向いたのも同じころ。時折学校の配属将校が訪れ、作業前に一列に並んで軍人勅諭を暗唱させられた。にやけた友人が殴られ、よろけた場面を覚えている。つるはしを手に土を掘り、トロッコに積んでは戻る...を繰り返す。班長は朝鮮半島から連行された「金さん」だった。トロッコが脱線すると線路に上げるのが大変だった。
作業に「悲しみやつらさを感じたことはなかった」が、海軍通信兵だった兄の戦死は違ったという。駆逐艦とともにフィリピン海溝に沈んだ兄の"遺骨"が自宅に戻ると、母親は「死にっこねえ」と何日もその前を離れなかった。「おふくろ、つらいずらなぁと思った」といたたまれなかった日を思い起こしていた。
母親と参加した清水小学校4年・有賀美晴さん(9)は「戦争は苦しくてつらい。今も戦争している国があるけれど絶対に戦争はしない方がいい」と話していた。