2023.6.21みすず野
夏至は大抵「昼が一年で最も長い日」の一言で片付けられ―何か食べたり風呂に浮かべたりといった―冬至のような風習を当地では聞かない。夏至から11日目の「半夏生」が田植えを終える目安というから、忙しかったのだろう◆北欧では、かがり火をたいて盛大に祝うそうだ。ムーミントロールが森の中でたき火を見て〈今日が夏至の前夜祭だったって、すっかりわすれてたね〉と言う。スノークのおじょうさんは〈九種類の花をつんで〉枕の下に置けば、夢がかなうと教える(『ムーミン谷の夏まつり』)◆夏至と聞くと、石を列状や環状に並べた縄文遺跡が思い浮かぶ。なんのために重い石を運んだのか。墓だ、いや祈りの場だといった議論に「天体観測」説が交じる。縄文人は既に日の出と日没の位置から夏至と冬至、春分と秋分の二至二分を知っていた(『安曇野大紀行』一草舎出版)◆カレンダーも天文台もない。暮らしが自然とともにあった時代に思いをはせる。御来光や夕焼けを仰いだ現代人がきれいだと感動したり、何とも信心深い気持ちになったりするのは、先祖の遺伝子が細胞のどこかに残っているためかもしれない。