連載・特集

2023.5.26みすず野

 松本民芸館(松本市里山辺)は創設者・丸山太郎の遺墨〈美しいものが美しい〉を掲げている。文は〈では何が美しいかと申しますと〉と続き、色や模様...の説明よりも〈無言で語りかけてくる物の美〉を〈直感で見て〉くださいと◆丸山を民芸運動へいざなった柳宗悦は67歳のとき病に倒れ、見舞いに朝鮮半島北部・会寧産の陶のすずりと水滴をもらう。贈り主はラジオドラマ「君の名は」で主人公を演じ、「銭湯の女湯を空にした」俳優の北澤彪である。柳は〈当り前以上の美しさはない〉ことを教えてくれると感激した(『別冊太陽』平凡社)◆県民芸協会の第6代会長に就いた池田素民さん(55)が本紙のインタビューに、松本を「希有な街」と述べておられる。生活工芸を通じたものの考え方が暮らしに息づき、町並みや「らしさ」をつくっていると。そう言われると、飲食店のテーブルに置かれたしょうゆ差しを見て抱いた雰囲気の印象がよみがえるが、慣れてしまうとなかなか...◆民芸の風土を今に伝える「クラフトフェアまつもと」があすから。現代の作り手が生み出した〈物の美〉に使い手はどんな直感を働かせるだろう。

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