連載・特集

2023.5.2みすず野

 勢いのあるときはいい。多くの人はやがて壁にぶち当たる。1987年ドラフト1位で阪神入りした野田浩司さんは93年オリックスへ。移籍早々に最多勝を挙げた翌年、肩も肘も痛くないのに納得のいく球が投げられなくなった◆〈絶対に崩しちゃダメ〉な自分だけの感覚をつかみ、修正したという。年少のイチローさんとロッカーが近かった。野田さんが〈お前、自分の中でチェックポイントとか持ちながらやってるの?〉と尋ねたら〈そりゃそうですよ、当たり前じゃないですか〉と返された(『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?』光文社新書)◆小欄の上に載る「がんばれ!社会人1年生」を読むと、若かった頃を思い出す。悪い見本の当方は何も助言できないが、将来の〝壁〟に備えて自分なりの修正点を見つける時期だと思えばいいのではなかろうか。早い遅いは関係ない。イチローさんはちょっと別格だ。同じような経験をした先輩との巡り合いも大切にしてほしい◆藤浪晋太郎選手が新天地の海の向こうで、もがき苦しむ。阪神ファンは彼を見放さない、最後まで応援し続ける。周りに相談できる人はいるだろうか。