2023.3.29みすず野
時刻表の復刻版が書店の棚にあった。昭和43(1968)年9・10月号―鉄道マニアには垂ぜんの的だろう。高度経済成長を支えるため輸送力の強化が図られ、中央西線に特急しなのを投入したのもこの「ヨンサントオ」だ◆マニアではないので2冊組4000円に手が出ず、代わりに『ダイヤ改正から読み解く鉄道会社の苦悩』(ワニブックス)を買った。帯書きに「廃線か?存続か?」―著者の鉄道ビジネス研究会はプロフィルに「鉄ちゃん」とあるから、廃線反対の論陣を張ってくれるかと思ったが、現状認識は厳しい◆京都駅の2020年度の乗車人員が19年度に比べて34・8%も減っているのに驚いた。関西はまだ低いほうで、首都圏だと35%以上がずらり。コロナ禍がもたらした社会の変化を〈時代の変わり目〉と捉える同書は、序章で〈日本の鉄道の未来を考えるきっかけになれば〉と願う◆地方の視点で線路を〈血管〉に、駅を〈心臓〉になぞらえていたのが心強かった。列車は〈血〉だ。関心を広げ、共に知恵を絞りたい。「毛細血管のことだから関係ないや」と思っていたら、心臓が弱ってしまうことにもなりかねない。